池田信夫先生が「プロジェクトX」を罵倒されています。NHKのOBとして身内に厳しい、あるいは近親憎悪みたいなところがあるのかもしれませんが、それにしても手厳しい。
私は「プロジェクトX」が好きでした。観たのは全シリーズの半分か3分の1くらいでしょうが、かなり感動させてもらい、勉強にもなりました。
「プロジェクトX」、それは戦後の日本人の奮闘記です。有名なものもあればあまり知られていないものもありますが、あるプロジェクトに人びとが関わり、様々な困難を克服しながら、目標を実現していく。
まず、そうしたケースの存在を知ること自体に、大きな意義があります。詳しく知りたい人は、関連する本を探して読めばいい。
そして、仕事へのヒントや励ましが得られる。すぐに役立つということはないでしょうが、続けてみているとジワジワ効いてくるような気がします。抽象的な理論ではなく、実際に生きて働いた人の物語を通じて教訓を得られるからです。
最後に、感動したり泣いたりすることで、カタルシスになる。下手なドラマより泣ける、しかも仕事しているオジさんほど感動しやすいという点で、希有な番組だったと思います。
人気があっただけに、「プロジェクトX」への批判は以前から数多くありました。番組を盛り上げるために、事実をねじ曲げたり誇張したり何かを意図的に省いたりしたことはあったでしょう。あと、長く続けたために、末期は明らかに「ネタ切れ」を来していました。さらに池田先生の言う”「プロジェクトX」に描かれているのは、日本経済をだめにした局所最適化の錯覚なのだ。”というのも、ごもっともです。
それでも、「同じ阿呆なら躍らなにゃ損々」だと思うんですよ。感情移入しないと、番組で描かれた物語から自分の血肉となる教訓を学ぶことはできませんから。
ついでに言えば、池田先生はあの番組をまともにご覧になったことはないようです。「くさいナレーション」はその通りですが、それは「・・・だった」を徹底的に連ねるという、忘れがたい特徴を持ったものでしたから。