ある意味マイナーな現象ですが、昔ながらの宮型霊柩車が、徐々に減っているといいます。今は全体の3割ほど。
主流は、洋型やバン型に移りつつあるようです。テレビドラマや映画で使われたり、有名人の葬儀で移るのも、最近は洋型が大半。いったい、日本人の霊柩車事情に何が起こっているのでしょうか。
3月1日付の読売新聞「生活探偵」によると、そこには主として2つの要因があると見られます。
1)選択する側の意識
「目立ちたくない」「霊柩車にお金をかけたくない」といった理由で、洋型を選ぶ人が増えているようです。昔は宮型が庶民にとって「最後のぜいたく」という感じもあったでしょうが、今はあのゴテゴテ・金ピカが人々のセンスに合わなくなっていることもあるように思えます。
2)火葬場の制約
一方、あまり知られていないものの実は根強いのが、こちらの要因です。火葬場の建設は近隣住民に嫌がられる傾向があります。そこで建設を受け入れる際に、「宮型霊柩車の受け入れ禁止」が条件になることが多いのだそうです。宮型の「いかにも霊柩車」というところが、忌避されるわけです。
こうして見てくると、この現象には日本人が死や葬式を目立たなくしたい・目立たなくしてほしいと考えていることが、大きく影響しているようです。宮型そのものは私もある種悪趣味と思いますが、こうした死や葬式からの逃避は、必ずしもいいこととは思えません。
これから我が国は当分の間、年間の死者が100万人を超え、どんどん増えていく「多死社会」の様相を呈してきます。そのときに人々が身近になった死を真摯に受け止めるのか、それともさらに死を忌避するのか。単に霊柩車の問題にとどまらず、我が国の文化的成熟の成否がかかった大問題だと思います。