「負動産」という問題

投稿者: | 2017-01-05

この2~3年で空き家の問題がメディアで取り上げられることが多くなりました。

去年の11月に出た「老いる家 崩れる街 ~住宅過剰社会の末路~」も売れているようで、問題意識が広く共有されつつあることは確かです。ただ政策の方向性を見ると、持ち家優遇が解消されたわけではありませんし、昨年行われた相続増税はむしろ空きアパートの増加につながっている始末。とても事態が良い方向に行っているとは言えません。

たとえるなら、目の前に大きな「落とし穴」が見え始めたのにそれを回避するどころかスピードを上げてそこに突っ込んで行っている、という感じではないでしょうか。

バブル経済が崩壊するまで、日本には土地神話というものがありました。今後は逆に、土地や不動産は若干の例外はあるもののどんどん値下がりしていくという「逆神話」みたいなのが生まれるかもしれません。管理のコストや税金、それに将来の処分費用を考えると、持っていても損するだけの「負動産」であることの方が一般的だという。

このことが将来の日本人の価値観や経済活動に与える影響は甚大なものとなりそうです。

たとえば相続の分野においても、資産の大半が土地とそこに立つ建物だった場合、処分ないし改修・立て替えの費用が持ち出しになるため、相続放棄する人たちが激増するかもしれません。これがますます不動産の需給をタブつかせ、さらに不動産の価格低下につながり、という悪循環が起こるのではないでしょうか。

それは目先持ち家や分譲マンションを欲する人には「朗報」かもしれませんが、長い目で見ると経済活動を萎縮させる逆資産効果が働き、結果的に全員が損する、ということになりかねません。

人口が増加から減少に転じることもそうですが、地価がどんどん上がって行く社会からどんどん下がっていく社会への転換も、いろんな点で我らの「常識」に変更を迫ってきそうです。ま、そんなことを考える意味でも上述の「老いる家 崩れる街」などこの問題に警鐘を鳴らす本を早めに読んでおいた方が良いですよ。探せば何冊も出ていますので。

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