いのちの値段

投稿者: | 2017-02-08

今日はもう一つ読売新聞がらみ。

数日前、読売新聞のサイトでこんな取り組みが紹介され、感心しました。

患者・市民が一緒に『医療費』を考える会 : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)

「受療者医療保険学術連合会(受保連)」という会です。

全国腎臓病協議会、全国心臓病の子どもを守る会など、13患者団体と、約25人の医療者などが参加し、医療保険の「受益と負担のバランス」について考える勉強会を定期的に開いています(受保連のホームページは、 http://www.sapph.jp/ )。

理事の田倉智之・東京大特任教授(前大阪大教授、医療経済施策学)は、「従来の患者会活動は、病気別の団体が各々『自分たちに支援を!』と訴えるケースも多かった。でも、少子高齢化、医療の高度化で、医療費が年々高騰し財政が厳しくなるなか、『国民皆保険をいかに維持するか』という危機意識が高まり、患者さんの中にも、『自分たちの要求をぶつけるだけではダメだ』と制度全体に目を向ける人たちが出てきた、ということだと思います」と言います。

「持続可能性」という言葉があります。患者団体などが「あれをしてくれ」「こんな支援を!」などと好き勝手に言っていても、財政の厳しい折から、いつまでも持つはずがありません。持続可能性を踏まえた上で「自分たちに何ができるか」「要求するとしたらどんな優先順位を付けるか」といった視点がないと、政府・行政だけでなく社会からも相手にされなくなるのではないでしょうか。

今後の日本では、「無い袖は振れない」という言葉を身にしみて感じる機会が多くなることでしょう。医療や介護の分野も例外ではあり得ません。一人一人ができるだけ制度の厄介になる部分を減らすとともに、制度にある無駄や非効率を徹底的に削らなければなりません。そして最終的には「何を見捨てるか」「誰に痛みを押しつけるか」ということも考える必要が出てくることでしょう。

災害時などにトリアージというのが行われることがあります。救命の確率や医療処置の必要性などに応じて患者に優先順位を付けるものです。時として「命の選別」にもつながるものです。日本では遠くない将来、国民皆保険下のトリアージみたいなのを考えなければならなくなるかもしれません。いや、皆保険自体が持続可能なのか、そして何としても制度維持を図ることが賢明なのか、といったことまで問われるでしょう。

なお、カネのことと同時に医療・介護分野における人的資源の制約も強く意識されるはずです。医療者や介護者のマンパワーに限界があるので、国民の需要にすべて応えることはできないのです。プラスアルファのサービス、上質なサービスを買えるお金持ちは余分なお金を払ってプレミアムなサービスを求めるようになるでしょうから、庶民が保険の枠内で享受できる人的資源はますます乏しくなります。最悪、カネはそこそこあるけど買えるサービスがない、ということになるかもしれません。日本の少子化→人口減少はそれほどに急激です。

ともあれ、読売新聞は「いのちの値段」を年間テーマにしているとのこと。この問題については何度も、いろんな角度から考えて行くつもりです。もちろん、来年以降も。

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