日本人の生前準備に関して最大の問題は、大半の人がその必要性を認めつつ、実際に着手する人は1割かせいぜい2割弱しかいない、ということではないでしょうか。
わかっていてもやらない、というのではわかっていないのと変わりありません。というか、もっとたちが悪いとも言えます。やはり実践率が過半数にならない限り、日本に生前準備が定着したことにはなりませんね。
専門家が生前準備に関して「正しい生前準備とは」とか「生前準備の落とし穴」みたいな話をエラそうに語るのは控えた方が良いと思います。まずは各人が気になるところから手を着け、完璧を目指さない、気が変わったら撤回したり修正しても構わない、というくらいの気楽な気持ちで始めてもらうのが良いのではないでしょうか。
多少うまく行かないことがあったとしても、それが遺族にとって良い思い出になることはよくあることですよ。
ただ私には、根本にある原因はやはり多くの日本人がいまだに「自分の死」と向き合うことにどこか気が進まないでいるためだと見受けられます。上記のようなことは言ってみれば小手先の話で、ここが解消しない限り、人々が進んで生前準備に取り組むようにはならないのではないでしょうか。
「何のために生きるのか」「自分の命をどう使うのか」といったことを突き詰めて考えておらず、周囲や世間で普通・当たり前とされているようなことを何となく受け入れて生きてきたことのツケが、ここに表れています。この辺はいわば生きる根っこの部分なので、それをすっ飛ばして生前準備のテクニックやコツだけを論じてもむなしい気がします。