先般読んだ「”痴呆老人”は何を見ているか」は、なかなか教えられるところの多い本でした。
中でも、筆者が駆け出しの医師だった頃のエピソードは印象的でした。認知症の老人を訪ねて、簡単な診察と話をしていただけで、周辺症状が改善した、というのです。この経験が、筆者をして認知症の老人との向き合い方を考えさせるきっかけとなったようです。
遺言コンサルタントたる私の立場からも、このエピソードは示唆に富んでいます。きちんと話を聴いてあげること、相手を一人の人格として尊重することが、いかに人をしゃんとさせることか。
業務の上で、「傾聴」を一つのポリシーにしようと思います。まず、話を聴くのに時間の制限を設けない。できるだけ少ない量で最大限的確な「問い」をぶつける。クライアントにスッキリしてもらうのはもとより、新たな自己を発見する手助けをする。
傾聴というと、カウンセラーの専売特許と考えがちです。でも、精神的に病を抱えているわけではない人に対しては、むしろプラスの精神的効果を発揮させるものとして、傾聴は使えるのではないでしょうか。