がん教育への期待と懸念

投稿者: | 2018-01-18

西日本新聞の記事で、がん教育についてのものがありました。

広がる「がん教育」 健康や命の大切さ知って 経験者が思いを伝える – 西日本新聞

日本人の死因1位で、国民の2人に1人がかかるとされる「がん」。この病気について知り、健康や命の大切さを学ぶ授業が、本年度から福岡市の全小中学校で取り組まれるなど全国に広がっている。「がん教育」とは子どもたちに何を教え、どんな効果をもたらすのだろうか。

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文部科学省は2014年度から全国でモデル事業を実施するなど、がん教育を推進している。正しい知識を身に付け、命の大切さを学ぶことを柱に据え、ガイドラインや教材例も作成した。次期学習指導要領では中学保健体育で「がんを扱う」と明記された。

モデル事業にも参加した福岡市は本年度、全144小学校、69中学校でがん教育をスタートした。福岡県もがん教育の指導者研修会を開くなど、積極的に取り組んでいる。福岡市教育委員会は「モデル事業でがんの正しい理解が進み、命の大切さも考えられていた。家庭での啓発にもつながった」と効果を実感する。

がんと認知症は、どの人にとっても無縁ではありません。本人がかからないとしても家族や同僚、友人の罹患がゼロということはあり得ませんから。一生にわたって学び続け、「どう向き合うか」を考え抜く必要があります。もちろん治療など臨床の現場の最前線について目配りしておくことも大切です。「○十年前に親がなったから」ということでわかったつもりになっていると、現在の「常識」をなかなか理解できなかったりしますので。

さてそう考えると、小中学生相手にこうした教育をわざわざ時間割いてやるのであれば、生徒たちがその先もがんなどについて自ら積極的に学ぼうとする姿勢を培うものであってほしいと思います。細々した知識を教えても頭に残るものではありませんし、医学・医療の進歩によってその知識自体が修正を迫られることもあるでしょうから。がんについて深く学ぶのは大人になってからでしょうから、せめてそこでの妨げにならないことを望みます。

記事では課題として、教えられる人材の不足、授業時間の確保、そして本人および家族ががんを経験している生徒への配慮が挙げられていました。ごもっともです。

それに加え私は、がん患者がじかに語ることのあやうさも感じます。もちろん患者の「生の声」は無味乾燥な講義よりずっとインパクトが強いでしょうが、それだけにそこで語られる患者の医療観や死生観が有無を言わさぬものとして受け取られる可能性があります。たとえばこういうところで語る患者は検診の重要さを訴えることが多いようですが、「がん検診は受ければ受けるほど良い」というほど簡単なことではありません。

がん教育、やらないよりはやった方が断然いいとは思います。ただ特定の医療観や死生観を押しつけてしまうかもしれないという「おそれ」を持ちつつ、慎重に行っていただきたいものです。

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