いろんなことを考えさせてくれる映画です。大人の(そして、もしかしたら子供にも)道徳教材として、格好のドキュメンタリー調映画ではないでしょうか。
教育のためにブタを飼うことの是非。
教師と生徒、それに親の三者関係。
生徒同士が議論するさま。
教師間の関係。などなど。
映像に関して言えば、キレイな曲をバックに生徒たちの表情が次々映し出されるシーンは、「崇高」とでも言いたいほどの美しさでした。全編を通して子供たちの賑やかさが目立つ映画でしたので、よけいに心に沁みたのでしょうね。
ところで、生徒による話し合いの結果は、飼育継続派と屠殺派で賛否同数でした。あれはやはり作為的かなぁ、と思います。大人でもそうでしょうが子供ならなおさら、飼育継続派が多数を占めるのではないでしょうか。ともあれ両者の対立には、価値観というよりもっと根本的な、生命に対する構えみたいなものの違いを垣間見ることができて、興味深かったです。
さて問題の、教育のためにブタを飼うことの是非。動物の飼育を通じて命の重さを実感させる、ということであれば、別の生き物、たとえばニワトリやウサギ、リスなんかでも十分なのでは、と思います。
ただ、映画の元となった教諭が行った実践については、否定するつもりはありません。一匹のブタの生と死を通じてこれだけ多くの人が物を考え、感動したのですから、当のブタも浮かばれるのではないかと思います。
まさかいないとは思いますが、この教諭の「美談」に影響されて、安易にこれをまねるケースは出てほしくないですね。教師を含めて全員が真剣に向き合ってこそ、意味のある教育実践となるでしょうから。
最後に一つだけツッコミを入れるなら、ブタを飼うことに対して、クラス全体があそこまで盛り上がるというのは、やはり不自然かも。
ともあれ、いい映画です。すべての人に観てほしい。小声で言えば、話題の「おくりびと」なんかよりずっと、心に響きました。