ネットではベーシック・インカムが少し前にひとしきり話題になりました。私など、発売された新書を速攻で買ったほど。
ただベーシック・インカムは、労働や社会のあり方を変えてしまう劇薬です。導入するにしても、議論やシミュレーションを慎重に行っていただきたい。現時点で私は、懐疑派・消極派です。賛成か反対かと問われれば、将来賛成になるかもしないけど、今は反対、というところでしょうか。
一方これと似て非なるものであるベーシック・キャピタルについては、かなり好意的に見ています。制度設計の細部についてはいろんな議論があってしかるべきでしょうが、おおよそ次のようなものとして始めるのはどうでしょうか。
- 18歳時と25歳時に二度支給
- 金額はそれぞれ200万円
- 一定期間後(たとえば20年後、40年後)に、元本を償還する義務を負う
- 返せない場合は、年金の積み立てから控除する
- 使途は自由
制度の目的は、社会生活に踏み出そうとする若者・踏み出したばかりの若者に一定の「資本」を与えることで、その後の人生を切り開く元手としてもらう、ということです。
使途は自由とする以上、何に使うか・使ったかについて国は一切関知すべきではありません。ただ、進学・留学や起業などに使うことが奨励されます。他に、一人暮らしの際の独立費用や結婚時の新居費用に充てるのも、ベターです。全額を運用に回し、殖やすことに血道を上げてもいい。
中には、遊興費や生活費など、「資本」とは言えないような使い方をする若者も出るでしょう。そうした愚行権も認めてあげていい。懸念すべきは、親や債権者に巻き上げられてしまうことくらいでしょうか。
この制度が実現すれば、総計400万ほどをどれだけ自分の人生のために活かせるか、様々な思索や議論、そして実践が展開されるはずです。一方、国としての実質負担は20年間、あるいは40年間の利息分に過ぎません。ただし支給したもののいくらかは消費されてその一部が税金として戻ってくるでしょうから、実質負担はもっと小さい。
未来の若者を大きく育てる元手とすれば、安いものではないでしょうか。
ベーシック・インカムとベーシック・キャピタルは似ているようで、その意味合いが全く違うようですね。
前者は、憲法第25条に根差した国民の生活を保障しようというものであるのに対して、後者は、社会に出るときにある程度の資本提供をしようというものであるようです。
私は、やるのであればベーシックインカムであるべきだと思います。もちろん慎重な議論のうえで。
なぜなら、敢えてキャピタルを行う必要性を感じないからです。一時的に資本が欲しければ借りればいい。奨学金制度だってあります。
社会に出たばかりで経験も浅い若者に、資本を提供したとしても持て余す人も多いでしょう。
現在の社会保障では、貧困に陥る・職を失う等で生活が困難になれば、役所に行き、手続きと審査のうえで給付されますが、この手続きと審査のための人件費などで結構な税金が使われているようです。
キャピタルと違い、ベーシック・インカムの方は社会保障も兼ねています。
上記のような手続きと審査にかかる税金の無駄を省き最初から、生活に必要な所得を給付しようというのです。
キャピタルの場合はあくまで、資本提供という形になるので、施行されたとしても並行して年金や社会保障、雇用保険等の制度の継続が必要だと思われますが、インカムの方では、それらを廃止してインカムとして一括にまとめる事が出来ます。
つまり、年金などで、今まで払っていた分をインカムの支給として回せるわけです。
まだまだ、書きたい事はありますが、長くなったのでここらへんで失礼させて頂きます。
長々と、突然すみません。
matuさん、コメントありがとうございます。
ベーシック・インカムとベーシック・キャピタルは、確かに別物ですね。私はこのエントリ、後者の方がよりましだろう、という意味合いで書きました。ご指摘のように、若者が資金調達する手立てが十分にあれば、あえて導入の必要はないし、もちろんその方が好ましいと考えます。
一方、ベーシック・インカムに関しては、今ははっきり反対の立場です。
・人口の減少するこれからの我が国では、労働の供給を増やすことが大命題
・インフレ等、経済への悪影響が考えられる
・ベーシック・インカムを導入したからといって、生活保護、年金、障害者福祉等をなくせるわけではない
特に第一の点だけでも「論外」の政策と言わざるを得ません。効果や影響のはっきりしない(しかも差し引きでマイナスになる可能性もある)奇策に頼るより、正攻法の改革を堂々と進めるべきではないでしょうか。