尊厳死の法制化には賛成しかねる

投稿者: | 2008-05-23

私も会員として所属する日本尊厳死協会は、尊厳死の法制化を活動の大きな柱にしています。でも私は、この動きには懐疑的です。

理由は二つあります。法制化のメリットが理解できない、つまり法制化しなくても尊厳死を社会に定着させることは可能だと考えていること。一方、法制化に強硬に反対する人たちの言い分、というより心情に理解できるものがあるということ。

自らが尊厳死を望むからといって、そのすべてが尊厳死の法制化に賛成というわけではないんですね。

では、今後の尊厳死運動の焦点としては何があるでしょうか。

・緩和ケアの普及・高度化
尊厳死と安楽死が混同されると、話はややこしくなります。緩和ケアがうまく行くようになれば、痛みからの解放策としての安楽死は、その必要がなくなります。議論が尊厳死だけに絞られれば、「何が許されるか」について社会的合意を得るのは比較的容易になるでしょう。

・医師の刑事免責条件の明確化
この点は、法制化の有無に関わらず必要でしょう。そしてこれに関しては、尊厳死に反対の人ともまともな議論ができるはずです。「複数医師の関与」「不知・末期の病であること」「本人の明示的意思」「あくまで治療や延命措置の中止ないし水準低下であって、薬物投与などで死期をことさらに早めるものではない」くらいは、最も厳格な条件としてみんなが合意できるのではないでしょうか。

・終末期医療についての啓蒙と意思表示の促進
社会のみんなが、できるだけ若いうちから終末期医療について学び、考える。そしてその結果生じた意思を、文書の形で表現しておく。意思が固まらないなら、「とりあえず、医学的に可能なことは最後までやってほしい」としておけばいい。そしてその意思は、年齢や経験を経るに連れて、変遷しても全然構わない。もちろん、社会的にその意思が収斂していかねばならないということもない。ただし、費用のことは「生きる権利」とは別の
問題としてありますが。

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