一票の格差、何が問題なの?

投稿者: | 2009-09-02

選挙のたびに持ち出される話題ですが、今回は最高裁判所裁判官国民審査にからめて運動を展開する人たちもいて、より注目を集めたようです。

個人的には、しょーもない問題だと思っています。もちろん、格差が5倍や10倍もあって、なお広がり続けている、というなら何らかの手を打つ必要があるとは思います。ただそれは、正義に悖るというより、そのことが政治不信につながるから。

逆に言えば、みんなが「格差は問題ない」と思えば、とんでもない格差があっても、政治システムは成り立つわけです。アメリカ上院くらいしか例がありませんが。

さて私が一票の格差についてそれほど関心がないゆえんは、以下の通りです。

  • どっちみち、一人の一票は各選挙区の何十万の一でしかなく、統計的に芥子粒のようなものであることに変わりはない。それを重いとか軽いというのはナンセンス。
  • この問題、田舎に不当に有利、という文脈で語られるが、議席の絶対数で言えば大都市圏の方が多い。従って、「一票の格差のせいで、地方が厚遇されている」というのは、根拠を欠く。
  • 不公平ということで言えば、政治的リテラシーの高い人・低い人が同じ一票ということの方が、よほど不公平。(といっても、政治的リテラシーに応じて票の重さに格差を付けるのは非現実的だが)

さてもう一つ。小選挙区制では、有権者の一部が「スウィング」しただけで結果が大きく変わります。2005年に自民党に入れ、今回民主党に入れた人は、せいぜい全体の2~3割なんじゃないでしょうか。割合の多寡はともかく、一部の人が結果を左右しているわけで、不条理といえば不条理。でも小選挙区制を取る限り、これは仕方がない。いやなら完全比例代表にするしかなさそうですが、その場合には連立協議の過程で少数政党がキャスティングボートを握ることが多々あり、結局は同じです。

要は、私から見れば、一票の格差を是正することは、政治の質的向上には無関係だということです。そんなことで騒ぐくらいなら、政治の中味を語れよ、と言いたいですね。

上記の運動については、もう一つ言っておきます。彼らは今回、一票の格差についての態度のみをもって裁判官の罷免を呼びかけました。これは裁判官という職業(いや、職業全般)に対する重大な侮辱だと考えます。「どうせ罷免されることはないだろう」と考えて単なる政治的アピールとして国民審査をダシに使ったなら、なお悪い。いずれにしろ、一票の格差を問題視する人たちの品性を疑わせるに足る愚挙ではありました。

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