「相続税100%」には、反対!

投稿者: | 2009-09-26

Twitterで「相続」をキーワードにタイムラインをウォッチしているのですが、「相続税は100%にすればいい」という主張、というか放言をよく目にします。

私は、これには断固反対です。というか、実現不可能だと思っています。理由は、以下の5つ。

1.徴税回避が広がり、それが経済や社会をゆがめる
税率が100%となれば、特にお金持ちの人はあらゆる手段を駆使して徴税を回避しようとするでしょう。たとえば贈与とか、財産の名義書き換えとか。もちろん、さらなる規制により回避をある程度防ぐことはできるかもしれません。でもそれは制度をますます抑圧的にし、制度のバカバカしさを際立たせることになるでしょう。

ちなみに、親が早くから子供に財産を贈与しすぎると、子供の方は介護など老後の世話に冷淡になると言われています。情けない話ですが、それが人情っていうもんじゃないでしょうか。

2.結局、税収はそれほど伸びない
現状、相続される財産は年に80兆円程度と言われています。それがすべて税収になれば、国家財政にとっては莫大な収入です。けれど、上記の徴税回避、そして「税金で取られるくらいなら遣ってしまった方がまし」という考えで人々は今以上に資産を食い潰して亡くなるでしょうから、税収は期待ほど増えない、と考えるのが常識的です。

はっきりしたことは分かりませんが、フタを開けてみたら数兆円だった、なんてこともあり得るんじゃないでしょうか。もし税収自体が目的なら、むしろ課税ベースを広げた上で「広く浅く」取るのが、賢明です。そういう意味での相続税の課税強化なら、私は賛成です。

3.高齢化で、格差是正にはあまり役立たない
相続税100%を提唱する人は、階層間の格差是正を目的として考えているようです。でも社会の高齢化で、相続は80歳90歳の故人から、同年代の配偶者、または50歳60歳の子供に対して行われます。子供は既に自分の家計を持っており、仮に親が金持ちだとしたら、その恩恵を十分に活かしているでしょう。相続財産をリセットすることは、その弊害を正当化できるほどには格差是正に役立たないと考えます。

4.相続財産はすべてが金融資産ではないので、そもそも非現実的
現在でも、相続税の物納というのは少なくありません。相続税が100%となれば、もっと増えるでしょう。でもたとえば子がいない夫婦がいたとして、相続財産の大半が自宅と土地だったとします。夫が亡くなったあと、妻は自宅を国庫に納め、自分は残った財産で賃貸住宅か何かを確保する、ということになるんでしょうか。そんな残酷な制度が、成り立つはずがないじゃありませんか。

5.いかなる税目であれ、「税率100%」というのは圧政以外の何物でもない
ある意味で、これに尽きます。税率100%というのは、個人の財産に対する無限の侵害を認めるという点で、暴力的な政府を認めることと同義です。その恐ろしさをわからず、無邪気にこんなことを口にする人がいることには、寒気を覚えます。そして、自由を守るために命がけで闘わなければならない時が来るのかもしれない、とも。

海外では、相続税をゼロにしたり大幅に軽減したりするところも少なくないと聞きます。「相続税100%」などという議論が大真面目で語られる日本は、やはりどこか社会主義的なのかもしれません。

「相続税100%」には、反対!」への4件のフィードバック

  1. ピンバック: 「相続税で階級固定化を防ごう」論への疑問 | 志の輪、広げよう。

  2. Test

    食いつぶしてくれるのはいいいことじゃないんですか?

  3. Koji0993282

    ますます相続税100%を実現しなければならないと思いました。

    公平な競争を阻害し、一部の既得権益血縁集団が永久にむさぼる社会は
    健全じゃないですね。

  4. Jkoyama

    私も、いくばくかの土地と家屋を持つ両親がおり、なくなった場合は、それなりに兄弟とともに、いくばくかの遺産を相続することになる立場にはある。
    しかし! 親の遺産なんて、自分の努力や能力にまったく関わりなく、転がりこんでくるものであり、そんなものは、持てざる者にとっては、不公平としか言いようのない憎々しい代物に違いない。
    親からの遺産相続を当てにする寄生虫のような人生なんて、俺は生きたくない!
    早く相続税100%になり、親が自分自身のために、生前に資産を使い切り、国に返した土地が有効に利用され、また自分自身も正々堂々と、ゼロから努力できることを期待する。

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