葬送の分野では、「その人らしさ」というのが、流行り文句になっています。
そのこと自体は大いに結構です。らしさの反対、あるいはらしさの欠如は、没個性ということでしょうから、らしさがある方が、いいに決まっています。
問題にしたいのは、そこで持ち出されてくるらしさが、本人の趣味だったり、好みのモノだったりと、はっきり言ってショボいものが多い、ということです。
故人である当人が恐らくそれを喜ぶであろう、と遺族が感じ、心から満足してそうしたらしさの発揮にいそしむなら、他人がとやかく言うのは余計なことです。また、実際に故人の持つらしさがその程度のものなら、いいも悪いもありません。
ただ意識の高い人、モノがよく見える人は、それでは「薄っぺらだな」と感じるはずです。やはり人は志を持って生きるべきだし、葬送の場で語られる「らしさ」も、それを反映したものでなければならないと思うのです。
「らしさ」があればそれでいいというものではない。その中身も問題だ、ということです。