「相続税で階級固定化を防ごう」論への疑問

投稿者: | 2010-01-20

経済評論家の勝間和代氏が、毎日jp上の企画「クロストーク」で、相続税の最高税率を70%に引き上げることを提案しています。

相続税については以前「相続税100%」には、反対!というエントリーを書いたのですが、階級固定化を防ぐために相続税を上げる、という意見にも、私は反対です。以下は、その反論です。

他にもっといい方法があるだろ
階級(より正確には、階層)の固定化を防ぐこと自体は、誰しも賛成だと思います。ただ、さすがに他の全てを犠牲にしても達成するべき目標とまでは言えません。より少ない社会的・経済的コストで達成できるに越したことはありません。その点で、相続税率アップは、あまり筋のいい策とは言えません。

そもそも相続というのは、相続人する方も高齢です。親の経済的成功・不成功が子の有利・不利につながる回路を断ち切る、ないしは弱めるというのなら、あまりに「手遅れ」なんじゃないでしょうか。

階層固定化を防ぐ策というのをいろいろ考えた時、相続税アップはまず採用されえない策だと思います。

国際的な潮流に反する
アングロサクソン諸国を中心に、相続税を軽減もしくは廃止するのが、世界の流れです。税制は国によってあまり違わない方が好ましいので、これも結構有力な反対理由になり得ます。もちろん「世界の流れに抗してでも、断固として行う!」と言うなら、それはそれで一つの考え方です。ただその場合は、他国の逆を行くことが弊害を生まないこと、そしてそれだけのメリットがあることを、ちゃんと説明してもらわないと。

制度の設計が困難(どんな制度にしても、「ひいき」が出てしまう)
勝間氏も提案文の中で「過度な累進課税により、住んでいる家を奪われたり、代々守ってきた不動産を分割・売却しなければならなくなったりということは避けるべき」と言っています。何らかの例外や控除を認めることを想定しているのでしょう。ただ、実はそれは言うほど簡単じゃなく、例外などを認めるとそれで有利・不利が分かれたりして、必ず不満が出るものです。また、そうした仕組みは、節税や脱税の抜け穴にもなりやすい。例外ありの高税率なんかにするなら、例外を極力なくしてそこそこの税率にする方がましです。そもそも、税金対策したり、納税事務に手間を取られるのは、この上ないくらい不毛な作業ですから。喜ぶのは、税理士だけという・・・。

ということで、私は相続税に関し、次のようにするべきだと考えます。

  • 控除等は最小限に
  • 累進課税はなだらかに
  • 税率は、10台%後半から、最高でも30%未満
  • 資産1千万円以上なら、課税されるように設計
  • 贈与税は相続税より若干低率にする

なお、一部には「相続税をゼロに」と言う人もいます。私は、そちらにも与しません。超長期の目標としては、それもアリかもしれませんが、少なくとも見通しうる将来、我が国が相続税という貴重な税源を手放すことは、自殺行為に等しいと考えるからです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください