今週の週刊現代(3月13日号)は、「美しい死に方を求めて」という15ページに及ぶ特集を組んでいました。
さすがに私には既知の情報・言説が多かったのですが、一番新鮮だったのは、意外にも自分の畑である遺言・相続分野に関して。2人の専門家が、「子供には遺産を遺さない方が良い」と言っているのです。
なぜ遺産を遺さない方がいいのか。佐藤和利弁護士の話。
二つの理由から成り立っています。まず一つは「遺産を残せば、相続の悲劇が訪れる」ということです。もう一つは、生きているうちに「使い切る生き方」を薦めているからです。
これまで遺言や相続の話というと、誰にどれだけ分けるか、ということに終始していたので、そもそも遺産を残さなきゃいい、というのは、まさに目から鱗が落ちました。
ただ、提言としては面白いけれども、それに従うのは難しいかな、と思います。
一つは、人は誰しも死ぬ時期を予測できない、ということ。仮に使い切ってしまってなお生きているなら、子や国の厄介になればいい、と言うかもしれませんが、そういう向こう見ずな生き方は、大多数の日本人の価値観に反するように思います。
そしてもう一つは、財産は何もお金だけではないということ。不動産を始め、お金に換えにくいもの、あるいは生きている間は必要なものもあります。厳密な意味で使い切ってしまうというのは、非現実的なのです。どうにかしたいなら、生前贈与によって財産を子の名義にするということになるのでしょうが、それではかえって遺産分割の話し合いを複雑にすることになります。揉め事の火種を消す、という趣旨に反するんじゃないでしょうか。
やはり、遺言をきちんと書いておく。そしてその内容について子供などにあらかじめ周知し、納得してもらっておく。これが相続トラブル予防の王道じゃないでしょうか。「使い切る」というのは、邪道と言わざるを得ません。
なお記事では、資産の使い道として、子や孫への投資、寄付などが推奨されていました。もちろんこちらは大賛成です。