5月18日に放送されたNHK「クローズアップ現代」、 「広がる“においビジネス”」を一足遅れで観ました。NHKオンデマンドで。
いろいろ興味深い内容だったのですが、アメリカのカジノで人をリラックスさせる香りを漂わせたところ、売上げが大幅にアップした、という話には少し首をひねりました。
何でも、客が「心地よさ」感じたことで滞在時間が延び、結果としてカジノに落とすお金が増えたそうです。似たような事例は、日本のスーパーについても紹介されていて、売り場でカレーのにおいをかげるような装置を置いたところ、やはり売上げアップにつながったんだとか。カジノの方がイヤな感じがしたのですが、きっとギャンブルに誘惑するかのようなやり方が下品・卑怯に感じられたためでしょう。
それはさておき、このように心理学など科学の知見をビジネスに活用することは、いささか問題をはらんでいると考えます。もとより一切の活用はまかりならん、というのは非現実的でしょうが、やはり「越えてはいけない一線」というのがある気がするんです。
人間というのはそれほど合理的な存在じゃありません。科学の知見をもとに消費をあおるような誘導をすれば、それは時として赤子の手をひねるように簡単なことだったりするかもしれません。その時、消費者は神様としての「お客様」などではなく、操作の客体におとしめられてしまっています。それはビジネスの姿勢として、良くないのではないか、というのが私の思いです。
広告にしろディスプレィにしろ、一定の「煽り」があるのはやむを得ないことでしょう。越えてはいけない一線をどこに引くか、それは消費者があとあとまで後悔しないかどうか、継続して購買するかどうか、といったところにあると考えます。それらを満たさないものは客を欺した、つまり広い意味の詐欺と言われても仕方ありません。
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