企業の倫理と売上と

投稿者: | 2010-08-15

普段私がよく考えていることに、強く関係する記事を見つけました。

東京新聞:マックのおまけ規制を検討 米市が肥満対策で:社会(TOKYO Web)

【ワシントン共同】米メディアによると、米サンフランシスコ市は13日までに、ファストフード店などが高カロリーの子ども向けメニューにおもちゃのおまけを付けることを禁じる条例を制定する検討を始めた。

米国で深刻化している子どもの肥満を減らすことが目的。同市に隣接するサンタクララ郡も同様の規制を今年、米国で初めて導入しており、さらに広がるか注目される。

条例案は、600キロカロリーを超えるセットメニューで野菜や果物がつかない場合、おもちゃ付きの販売を禁止する。

米国では子どもの3人に1人が肥満か太り気味とされ、対策が求められている。高カロリーの子ども向けファストフードの消費増加が一因と考えられており、米紙USAトゥデーによるとおもちゃのおまけがこうしたメニューに子どもを引きつける要因になっている。

おもちゃ付きメニューは全米で年間10億人分以上販売されているといい、条例が成立すればマクドナルドをはじめとするファストフード店には打撃。このため同市のレストラン協会は反対している。

さすがに、検討されているような規制案は「やりすぎ」だと思います。ただ、ファストフード企業がおまけで子どもを釣って売上げを伸ばしているとするなら、それはやはり問題だと思うのです。それでなくても、子どもの頃にファストフードの味になじめば、一生ああした脂っこいモノを好むようになるでしょうからね。

さてこのことはファストフードの場合わかりやすいのですが、広く一般企業、特に消費者向けの企業全般に問われるテーマだと思います。つまり、目先の「顧客満足」は獲得できるとしても、長い目で見たときに顧客の健康を害したり、人生の質を下げたりするなら、売上げを追求することは許されるかどうか。またそれ以前に、企業は、顧客の健康や人生の質に配慮する必要があるのかどうか。

配慮する必要はない。従って、顧客をいわば「食い物」にして売上げを追求することも許される、という立場もあろうかと思います。「そうした配慮は、口で言うほど簡単じゃないから」などと言って。

でも私は、こうした企業姿勢は実は脆弱だと思います。そして希望的観測を交えて言えば、これからの時代、そんなの通用しないよ、とも。それには、大きく2つの理由があります。まず、従業員の良心に悪い影響があります。そして、実情を顧客や広く社会に知られるとマズいので、営業活動のどこかに欺瞞や隠蔽が紛れ込みます。

こうしたときのテストは、実は簡単です。従業員に「あなたは、自社製品(あるいはサービス)を喜んで使いたいと思いますか?」あるいは「家族や友人など身近な人に、自信を持って薦められますか?」と言った問いを投げかければいいのです。これらの問いに全ての従業員が胸を張って「はい!」と答えられるのでなければ、その企業は事業のかなり根本的なところに「悪事」を抱えている、ということになります。

さて上記の記事ですが、もしファストフォードの食べ過ぎに悪い面があるなら、それを訴える情報を広く流せば良い。あるいは、ファストフード企業の従業員に、自分たちの仕事の「意味」を、教えてあげれば良い。微温的かもしれませんが、問題を中長期的に解決するには、この方法しかないように思います。

なお、アメリカでは低所得層ほどファストフード店に依存する傾向があると聞きます。その意味でこの問題は貧困問題とも絡むかと思います。ただそこまで論じ始めると長くなるので、これはいつか機会があれば。

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