父の遺志を継ぐということ

投稿者: | 2008-08-08

昨日のNHKスペシャル「解かれた封印 ~米軍カメラマンが見たNAGASAKI~」には深い感銘を受けました。

大東亜戦争終了後に占領軍の一員として長崎入り、記録係として原爆の「効果」を写真撮影したジョー・オダネルを中心としたドキュメンタリーです。オダネル氏はもともと日本人には強烈な憎しみを持っていたのですが、原爆の被害を知るにつれ、それが哀れみ・同情に変わっていきました。そして軍には禁じられていた私物カメラで、30枚ほど長崎市民、とりわけ子供の写真を撮影していたのです。

晩年になって氏は、それまで封印してきたこれらの写真を公にし、原爆の悲惨さ、原爆投下の不当性を訴える活動を始めました。たった一人で。アメリカでは今も「原爆投下は正しかった」と考える人が大部分ですから、彼の主張は理解されず、むしろ攻撃の的となりました。日本風に言えば、「お前は非国民だ」というわけ。奥さんも彼の考えに付いていけず、離婚することに・・・。

そんな中、彼の味方となったのは、長男のタイグ氏でした。父の生前は励ましのメッセージを送り、死後は父の遺志を継いで、30枚の写真とともに原爆の現実を伝える活動に従事する。アメリカでは異端の主張ですが、ここ最近は少しずつではあるが素直に原爆と向き合おうとするアメリカ人が出始めているということに手応えを感じているようでした。

昨年8月9日(長崎に原爆が投下された日です)に亡くなったジョー・オダネル氏。周囲の無理解には無念の思いもあったかと思いますが、その「志」は息子さんがきちんと引き継いでくれている。これこそ、最高の故人への供養であり、家族愛の発露だと思ったことでした。そして、社会から孤立しても父の信念を引き継いでいこうとする青年に、アメリカ社会の底力を見た気がします。

ところで、番組のモチーフともなっていた「焼き場に立つ少年」、ぜひ一人でも多くの日本人に見ていただきたいです。肉親の死という悲しみに耐えるいたいけな姿が、たまらなく神々しいものに見えます。そしてまた、戦後日本人の質が確実に下がったことを教えてくれるのです。

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