久々の映画レビューです。
前々から気になっていた作品を、やっとDVDで観ることができました。
東京郊外のとある商店街で薬局を営む吟子は、夫を早くに亡くし、女手ひとつで娘の小春を育てていた。ある日、エリート医師との結婚が決まった小春の結婚式に吟子の弟・鉄郎が突然現れ、泥酔して披露宴を台無しにしてしまう。親族に責められる鉄郎をかばう吟子だったが、鉄郎の恋人だと名乗る女が借金返済を求めて吟子の薬局に現れ……。
ある意味でネタバレになってしまいますが、ずばりこれは「看取り」の映画です。似たテーマのものとしては伊丹十三監督の「大病人」があります。ただあちらは病院が舞台で、終末期医療がテーマでした。その意味では、私の知る限りは「日本映画初の看取り映画」と言って良いように思います。
作品としては、物語の根幹に関わる以下の部分で、不満や違和感を覚えました。
- 東京の人吉永小百合と、大阪の人笑福亭鶴瓶が姉弟というのが不自然
- 鉄郎(鶴瓶)が姪の小春の名付け親になるいきさつが、あまりにご都合主義
- 看取りの施設の人がやや無神経であるかのように描かれていたのは、不可解
ということで、評価を星で表すなら、4つですね。ただ細部はよくできた映画なので、上記のことを気にしなければ(といっても、気になってしまうものですが)、大いに満喫できる映画だと思います。深く理解するために二度、三度観る価値がある、とも言えます。
山田洋次監督のファンなら、「寅さん」との類似などを見つけて、その面でも楽しめるのかもしれません。その点、私はあまり熱心なファンでなく、最近はまったくあのシリーズを見ていないので、ピンと来るところはなかったのですが。
この作品は山田監督が、市川崑監督の「妹」へのオマージュとして作った面もあるそうです。「妹」の方はまだ観ていないので、いずれ観てみようと思っています。
そして何より、この看取り施設は東京・山谷の「きぼうのいえ」がモデルになっているとのこと。既にメディアでたびたび取り上げられているのでご存知の方も多いでしょうが、初耳という方はぜひ調べてみてください。ご夫婦が中心となって運営されてるのですが、日本におけるマザーテレサみたいな方々ですよ。
今後日本では、介護や死が重要なモチーフとなった映画がいっぱい作られることと思います。そうした中でこの作品は、一種の金字塔みたいに見なされるようになるかもしれません。