成年後見制度、次の課題

投稿者: | 2011-08-01

ある司法書士法人のブログを拝見しました。

医療行為と死後事務: 高梁川日記

成年後見の仕事をしていて、いつも矛盾を感じるのは、①成年後見人には医療行為の同意権がないこと、②本人の死亡と同時に後見人の代理権は消滅するため応急処分義務の範囲内と解されない死後事務は行えないこと、この2点です。

今週はこの2点でほんとにたいへんです。特に私の場合、身内が医療関係者ですから、①については晩酌の際にブツブツと文句を言われます。私が普段、仕事上で医師に説明している内容に対する批判が、夕食後、ナマの表現でつきつけられるわけですね。医療現場からすれば、要するに「何のための後見人だ!」と。

成年後見制度そのものに関しては、器は整ったが、利用がイマイチ進んでいない印象です。受け手も、まだまだ質量とも不十分でしょうし。

ただ制度の枠組み周辺では、上記のように未整備な部分が残っているようで。

まず医療についての同意権。成年後見人に同意権を持たせる、というのも一つの考え方でしょうが、財産についての代理とは別に、医療行為についての代理業務を制度化した方が良いんじゃないかと思います。で、医療と法律、両方がわかる専門家を育成する、と。法律の方は、それほど高度な知識はなくても平気でしょう。それよりも、医療(そして場合によっては介護)の現場をある程度理解していることが必要かと思います。

次に死後事務のこと。これも「別口」になるのは致し方ないでしょうね。当人の死によって発効する契約を、別途結ぶしかありません。

それにしても、こうして考えると「家族」を当てにできない社会では、いろんな面で制度化を進め、個々人が契約したりしなければならなくなってくるように思えます。さすがに日本がアメリカほどの契約社会・訴訟社会になるとは思いませんし、なってほしくはないですけどね。それでもある程度の契約社会化は、仕方ないでしょう。

願わくは、それが「専門家」にとっての利権とならないでほしいものです。物事がいたずらに複雑になり、専門家に金払わないとまともに生きていけない社会というのは、決して健全とは言えませんから。

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