金融を、価値を生むビジネスに

投稿者: | 2008-09-18

今朝の日経「経済教室」に、池尾和人・慶大教授が「裁定型業務の限界超えよ」という文を寄せていました。

金融活動は、利益の源泉によって「裁定型金融」と「価値創造支援型」に大別できる。裁定型金融は「安く買って、高く売る」というものだが、それが高収益を上げるとともに結果として収益の機会が減り、他者を騙したりごまかしたりするような略奪的なものが目に付くようになった。今回の金融危機は、価値創造支援型へ回帰する契機ととらえるべきだ、というものです。

で、結語の部分。

ただし、現下におけるバリューアップ型金融は、金を貸すより知恵を貸すような内容でなければならない。金を払ってでも借りたいような知恵を出すには、高度な専門知識と能力が必要であり、金融サービス産業は文字通りの知識集約型産業に転換していかなければならないといえる。

リーマン・ブラザーズの破綻などを見て、金融の役割って何だ、などと考えていたところなので、非常に参考になる文章でした。池尾氏も言うように、制定型金融は本来の存在意義にふさわしい範囲・規模に縮小すべきです。いくら利益を上げたからといって、こうしたビジネスの経営者をヒーロー扱いするのは、やはり変でしょう。

今回の件を市場主義の批判材料に使う人がいますが、それは受け入れがたい。市場は長期的に見れば公正な答えを出す可能性が高いですが、短期的には偏ることもある。肝心なのは、「傷」の手当てを早めにして、それを市場・産業のさらなる高度化につなげることだと思います。そもそも、市場がうまく機能しなければ、裁定型がボロい儲けにつながることになる。

どんなビジネスでも、結局は顧客や社会に価値を生むことで儲けをいただいています。今回の危機が、金融にそんな常識が戻ってくるきっかけとなることを祈ってやみません。上の引用部分でもわかるように、これからの金融は、真に有能な人間がやりがいの持てるビジネスとなるはずですから。

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