岩波書店が、再来年度定期採用の応募を事実上、縁故のある者に限定したことが、物議を醸しています。
応募条件は「コネのある人」 岩波書店が来年度採用で – MSN産経ニュース
出版社の岩波書店(東京)が平成25年度定期採用の応募条件として「岩波書店から出版した著者の紹介状あるいは社員の紹介があること」とし事実上、縁故採用に限る方針を示したことが2日分かった。
岩波書店は大正2年創業の老舗。就職先として人気が高く、例年数人の採用に対し1千人以上が応募している。
「縁故」に限ったのは、出版不況が続く中、有能な人材を効果的に採用するのが狙いとみられるが、機会平等の観点から議論も呼びそうだ。
縁故者が選抜の過程で有利になることは、多くの業界・企業でありがちなことでしょう。地方公務員なんかも含め。なので縁故は絶対良くない、という批判は実態に即していなさすぎかと思います。ただ縁故のない者に応募の機会すら与えないというのは、さすがに時代錯誤に過ぎるのではないでしょうか。業界によっては、新卒者の過半を外国人学生から採用する、という企業もあるというのに・・・。
もう一つ私が懸念するのは、今回の件で岩波書店、ひいては出版業界のイメージが甚だしく低下することです。それでなくても電子書籍へのシフトでモタモタしている印象のあるこの業界、この件で時代の流れに後ろ向きなイメージが決定的になってしまう感じがします。学生のリクルーティングでも、消費者の選択においても、選ばれづらくなるのではないでしょうか。
現在の学生が就職してから40年近くの職業生活の間には、出版は大きく電子書籍へシフトしているものと思います。もしかするとその過程で、伝統と権威ある岩波書店といえど、淘汰の波にさらされるかもしれないな。そんなことを思ったニュースでした。岩波書店と言えば、往時は朝日新聞と並んで「進歩的文化人」の牙城だったはずなんですけどね。どこが進歩的なんだか。