イギリスのサッチャー元首相が亡くなりました。87歳でした。
2004年に亡くなったレーガン元大統領に続き、20世紀を代表する自由主義政治家がまた一人鬼籍に入ったことになります。心から哀悼の意を表します。
それにしても、同時期に我が国で長期政権を維持した中曽根康弘元首相がまだ健在だというのは、驚嘆に値しますね。今年で95歳ですよ。サッチャーの葬儀は国葬とはならないそうですが、中曽根氏が亡くなったらさすがに国葬になるのではないでしょうか。もし中曽根氏が国葬にならなかったら、わが国で国葬なるものが行われることは未来永劫ないでしょう。
サッチャーの進めた国営企業の民営化など自由主義政策に関しては、今なお評価が分かれています。英国の衰退に歯止めを掛けたとみる向きもあれば、社会を混乱させ貧富の格差を拡大したと否定する人もたくさんいます。我が国における中曽根政権・小泉政権についても同様の対立がありますね。自由主義か、社会民主主義(あるいは共産主義)かの思想対立は、冷戦が終わって20年以上経った今でも、終結したと言うにはほど遠い状況です。
また欧州の統合に対して冷淡であり続けたことも、この数年来の欧州危機を考えると、複雑な反響を呼びそうです。統合に懐疑的な向きからは先見の明があったと評されるでしょうし、統合を進めたい側からは統合の足を引っ張った頑迷な政治家として見られていることでしょう。
サッチャーは1995年に自伝「私の半生」を日本で出版、それに併せて日経新聞で「私の履歴書」を連載しました。その折に著書の宣伝で来日、私が働いていたビルにあった大型書店でサイン会をしました。直接顔を見ることはありませんでしたが、ちょっとしたフィーバーが起こったのを覚えています。
これからもサッチャーの伝記や評伝はたくさん書かれることでしょう。サッチャーをどう評価するか。それは私たちがこれからの政治・社会をどうデザインするかということと密接に結びついています。