「医療否定本」という現象

投稿者: | 2013-05-08

今に始まったことではないかもしれませんが、巷では医療や医師を否定するかのような本がいくつもベストセラーになっています。

私はほとんど読んだことはないのですが、「(ある種の病気や病態においては)医療行為には百害あって一利なし」といった趣旨のものが多いようです。そしてそうした内容について反論したり批判する医療関係者のブログを、よく見かけます。

医学のスタンダードな知見からして誤った言説や偏った言説に対しては、きちんと反論しておくべきでしょうね。

でも同時に、多くの一般人がこうした本を手に取り、多くは共感しながら読んでいるというのもまぎれもない事実です。医療関係者には、その点もきちんと受け止めていただきたいものです。「医療不信」「医師不信」なるのもがあるとしたら、自分たちの側にも改めるべきところがあるのではないか、といったことを振り返っていただきたいのです。

もっと言えば、中長期的に日本人の「医学リテラシー」とでも言うべきものを高めていく必要があるのかもしれません。専門家から見て「あり得ない」「荒唐無稽」と思われるようなものをもスンナリ受け入れてしまう人が少なくないのだとしたら、医学の常識が一般の国民の間に浸透していないということでしょうから。

出版社の側は「売らんかな」で刺激的なタイトルを付けます。それに煽られる人がいる(しかも少なくない)というのは残念なことではありますが、医療を真っ向から否定するような本がバカ売れする、というのが今の日本の現実です。このことは一般人と医療・医療関係者の間に溝や壁があるということを暗示していないでしょうか。単にくだらないと切り捨てるのではなく、そこから医療のあり方をより良くしていくための「気づき」を得るべきだと私は考えます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください