法的に正しい、だけじゃ済まない

投稿者: | 2008-10-22

いつもRSSを使ってチェックしている(「遺言」という語を含む新規質問のRSSを、RSSリーダーで購読しているんです)「教えて!goo」に、「メールの遺言書」という質問が投稿されました。

メールの遺言書

機械で打たれているので法的には無効なのでしょうか?

また、日付、押印がないといけないらしいのですが、携帯だと跡をのこせないからだめでしょうか?

写メとかで押印とかとるのはどうなのかなっと思いました。それはどうなんでしょうか?

以上三つおねがいします。

法的な遺言としては自筆証書遺言の領域ですが、そもそも「自筆」ですらないので、法的には議論の余地なく「無効」です。日付がどうとか押印がどうとかは、考える必要もありません。

実際に、回答している人たちもあっさり「無効」と答えています。ご丁寧にも、関連する民法の条文を転記している人もいたりして。

でも、遺言コンサルタントなど「法務コンサルタント」としては、「無効です」と答えてそれで終わり、というわけにはいかないんじゃないか。それが以下の話です。

まず、メール遺言書を本気で考えているなら、そのリスクについて説明しなければなりません。メールで遺言した内容が法定相続分とあまりに異なっていた場合、遺産分割協議がもめる要因になりかねません。

そして、より建設的な話として、代替案の提案を行う。これについては、本人の希望や性格などを勘案しつつ、自筆か公正証書かのどちらかへ誘導していけば良いでしょう。

最後に、「メールの遺言書」なんてことを言い出したことの背後にある思いをくみとり、別の形でその思いを活かせないか、模索する。メールの遺言書ではちょっとバカバカしすぎてまともに付き合う気がしなさそうですが、背後にある思いは意外に深く、重いものかもしれません。

依頼人と向き合う場は、法律の教室ではありません。いろんな人生、いろんな思いを抱えた人が、遺言という形で意思を遺し、実現しようとしてやって来ます。「法的に無効です」「無理です」なんてことを言うのは、あまりに情けない。

依頼人と一緒にどれだけ考え、悩めるか。それが本物の遺言コンサルタントとただの法律バカを分けるポイントだと思います。遺言コンサルタントには、カウンセラーのマインドも必要かもしれない、などと考えたことでした。

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