「青空文庫」を引っ張って来た富田倫生さんが亡くなりました。61歳。
著作権が切れた文学作品などをインターネット上で無料で公開している「青空文庫」の世話人で、著作権の保護期間の延長に反対を訴え続けた富田倫生さんが16日、岐阜県内の病院で肝臓がんのため亡くなりました。61歳でした。
富田倫生さんは広島市の生まれで、編集プロダクションなどを経て、平成9年にインターネット上で著作権が切れた文学作品などを無料で公開する「青空文庫」を立ち上げました。
電子図書としての登録作品数を1万点以上に増やすとともに、富田さんは著作権の保護期間を作者の死後50年から70年に延長する動きについて、反対する活動を積極的に行いました。
富田さんの人となりは存じ上げませんが、青空文庫は我が国の宝だと思います。文学方面に偏っているとはいえ、古典を無料で読める、しかもパソコンのみならずスマートフォンやタブレットでも。こんなありがたいことがあるでしょうか。
青空文庫をめぐっては、TPP交渉のからみで「著作権保護期間延長(50年から70年へ)」が取り沙汰されているところでした。それを気にしながらの死だったことでしょう。謹んでご冥福をお祈りいたします。
ただ富田さんが亡くなったあとも青空文庫は存続するでしょうし、次々と新たな作品がライブラリーに加わることと思います。ご本人は他の仕事を無視して「青空文庫の富田」と呼ばれることにいささか不満を感じておられたそうですが、青空文庫がある限り富田さんの名は残ります。こんな名誉なことは、なかなかありませんよ。
青空文庫には、富田さん自身の著作も並んでいます。追悼を兼ねて、「本の未来」などをダウンロードし、読み始めたところです。
「本の未来」を創っていく営みは、遺された我らに託されたことになります。そしてもちろん、著作権の保護期間延長を阻止することも。