当たり前の話ですが、大切な事実だと思います。生きるのも死ぬのも、結局その人自身だけで経験するしかないのですから。
でもこの事実を確認した上で、「さはさりながら(それはそうだけれども)」と言いたいですね。人は誰も結局のところ孤独だからこそ、互いを尊重したり連帯したりすることが意義深いものとなるのではないでしょうか。また、一つ一つの出逢いがかけがえのないものとなる。
あらゆる倫理の出発点は、死すべき運命を持つこととあわせ、こうした点にこそあると考えます。この点の認識のない倫理は、どこか薄っぺらなものとなるしかないでしょう。反面、この認識にとらわれて虚無主義に陥るようでは、社会など成り立ちようがありません。
ときどき老人の孤独死が話題になります。今後は独居老人が増えてくることは確実ですから、孤独死は日常茶飯事となるでしょう。ここで悲しいことは、死の瞬間に誰にも見取られないことよりもむしろ、死後長い間誰にも気づかれず放置されていることにあります。その人は一切の絆というものを失っているわけですから。