読売新聞で長らく連載されている中山二基子弁護士のコラム「転ばぬ先に」。もうすぐ100回目を迎えるので、その際には記念エントリを書きます。
さて連載92回目の今回は、「遺言書 判断力のあるうちに」。55歳で若年性アルツハイマーと診断された男性が、遺言を作成したという話。
遺言書 判断力のあるうちに : 転ばぬ先に : 介護・老後 : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
このコラムを読んで、考えたことは2つあります。
まずは、いわゆる「遺言適齢期」のこと。
この言葉、言うまでもなく結婚適齢期からの連想です。結婚適齢期ですら死語になりつつある昨今、遺言について適齢期を云々するのは、ナンセンスでしょう。
基本的には、様々な人生の節目が、初めての遺言のきっかけとしてふさわしいでしょう。子供が生まれた時や成人した時。親が亡くなった時。定年退職した時。大病を患い、克服した時。などなど。
でも、早いに越したことはありません。不慮の事故などによって命が絶たれる可能性は、何歳の人であれ等しくあるわけですから。
もう一つは、遺言能力のこと。
これは今後、大きな問題になって来る気がします。遺言をした人がその後認知症などになった場合に、「遺言の時点で既に意思能力が失われていた」と裁判で争われ、少なからぬ遺言が無効となる、というような。
コラムではさらっと「医師の診断書を持っていくのがよい」と書かれていますが、それでいいのかどうか。公正証書遺言であっても、遺言する人がその時点で能力があったということを別の手段で担保する必要があるでしょうが、法律家にしろ、医師にしろ、そうしたことの専門家ではありません。要介護認定の仕組みを活用するなり、別途専用の制度をつくるなりして、この問題に対処しなくてはならないでしょう。
たとえば公正証書遺言の一割が後から無効とされた、なんてことになったら、制度の信頼性が失われてしまいますから。