読売新聞に中山二基子弁護士が連載している「転ばぬ先に」。今回は「家」をめぐる問題です。
実家の全財産を兄が相続していたところ、その兄が今度は「全財産を妻に相続させる」という遺言を遺して亡くなった。夫婦には子供がいないので、兄嫁が亡くなったら、次は兄嫁の兄弟が相続することになる。納得できない、という話です。
確かに、兄嫁の兄弟は相談者の実家とは無関係の人ですから、割り切れない気持ちを持つのは理解できます。本来なら、兄の生前に話し合って、家の財産その他をどう受け継いでゆくか、決めておくべきだったのでしょう。
ただ相談者自身も東北を離れて東京に出るという、ある意味で実家を捨てた身。大きなことを言えない立場なのは間違いありません。養子を申し出たところを見ると、家の継承について強い意識をお持ちのようにも見えますが。
さて今後は、一人っ子同士の結婚や、結婚しても子供がいない夫婦、長男など跡取りが結婚してないケースが増えるでしょう。「家をどう受け継いでゆくか」という問題が、多くの家族で悩みの種になりそうです。
この件については、一般的な解答はナンセンスです。なので、思うところを3点ほど。
まず、今生きている人たちのための財産と、家の財産はある程度仕分けした方がいいんじゃないでしょうか。理想を言えば家の財産を信託化してほしいところですが、普通の庶民にはそれは酷。せめて口座を分けるなりして、別管理にした方がいいんじゃないでしょうか。その点から考えると、兄の遺言は明らかにバランスを失しています。死の1ヶ月前というのも、何か匂いますねぇ。
2つ目。受け継ぐべきものは財産だけではないということ。名字やお墓、果ては家風のようなものまで。そして我々は、今後「家」というものにもっと自覚的になり、それを時には守り、時には新たに培う、そうした姿勢が求められるように思います。
最後に。「家」の継承がそれほど大事だとするなら、我々はもっと養子に対して積極的であっていいんじゃないでしょうか。血がつながっていなくても、あるいは場合によっては民族や人種が違っても、家が途絶えるよりはずっとまし、なのではないでしょうか。
私個人は、実家の永岡家の継承に貢献できなさそうなので、あまりエラそうなことは言えないんですが。