医師で作家の久坂部羊氏が、産経のコラム「断」に、“「患者コミュニケーション学」を”という文を書いていました。
専門知識のある者が、一般人に説明するのは、そうとう高度なテクニックを要する。医師はそれを学ぶ機会がない。せいぜい研修医のころに、先輩医師の説明を横で見て、いい加減に学ぶだけだ。
・・・
患者に、病気や治療をわかりやすく説明し、なおかつ不要な不安を与えないのは、実は「至難の業」ではないか。医学部の講座として導入してもいいくらいの知識と経験と技術が必要だろう。
医学は膨大な知の体系です。多くの「医者の卵」さんたちはそれを習得するのに手一杯で、患者との円滑なコミュニケーションのスキルを身に付ける余裕などない、というのが実情なのでしょう。でも少なくともプライマリー・ケアに携わろうとする医師なら、医学の習得に振り向けているエネルギーを少し割いてでも、このスキルの獲得や向上に振り向けるべきでしょう。
その講座の内容としては、
- 基本的な理論や概念枠組みの座学
- ロールプレイング
- 有能な医師の診療場面を観察
- コミュニケーション専門家の話を聞く
- 他の接客業を体験する
などが考えられます。
ただ、現実としては医学の高度化・精緻化はますます進むでしょう。お医者さんにスーパーマンになれというのも酷な話です。結局は、医者と患者の橋渡しとなるコミュニケーション専門家を医療の場に導入するのが、近道なのかもしれません。