坂岡洋子さんという方が、老前整理なるものを提唱されています。
肩書きもズバリ、「老前整理コンサルタント」。老前整理と生前整理とを区別していまして、前者は後半生をいきいきと生きるための整理、後者は遺される人に迷惑を掛けないための死に準備、みたいに説明されています。
「生前準備」を提唱する私からすれば、「生前整理」の範囲・定義をあえて狭めているなぁ、という印象です。一般に言われる生前整理には彼女の言う「老前整理」も含まれているのではないでしょうか。まぁそこは、「いきいき」を強調するためにあえて耳慣れない造語、ヘンテコな造語を造るというマーケティング上の作戦なんでしょうね。
マーケティング上ということで言えば、60歳前後の早いうちに着手してもらえば、その人が亡くなるまで関係が続きますし、その過程で子供をお客さんにできるかもしれません。そういう「巧さ」もあるように思います。計算尽くかどうかは、わかりませんが。
さてこの「老前」というコトバ、考えてみればわけのわからないところがあります。「老いる前」ということになると、60歳になるかならない年代の人だってそれなりに老いは来ているわけです。「老前」というのを突き詰めれば、30代前半くらいまでじゃないでしょうか。
そもそも老前というのは、老後という言葉を意識してつくられたものかと思います。この老後という言葉も、人生50年時代とか50代半ばまでに引退するのが普通だった時代ならともかく、今の時代には据わりが悪いような気がしてなりません。「老人」だって、そうですよね。
高齢化が進む中で、老いにまつわる言葉は揺れ動き、時には新しい言葉が生まれたりもするでしょう。そうした中で「老前整理」も、もしかしたら定着していくのかもしれません。注目しておきたいコトバのひとつです。