「納得診療」に必要なもの

投稿者: | 2008-09-12

いつも愛読している医師で作家の久坂部羊氏のコラム。今回は医師の説明と患者の不安について。

【断 久坂部羊】医師の誠意=心の余裕(MSN産経ニュース)

こういう事情や治療の経過をきちんと説明すれば、早めの退院も納得してもらえたのではないか。

 知人が怒りを感じたのは、主治医の説明に誠意が感じられなかったからだという。患者の不安や心配を、医師がもっと理解していれば、そんな印象を与えることもなかっただろう。要するに思いやりが足りないのだ。そのために必要なのは心の余裕。だが、医療崩壊でますます激務になる医師に、そのゆとりが十分持てるだろうか。

「”インフォームド・コンセント”では分かりづらいから、”納得診療”とでも呼んだらどうだ」という意見がありましたが、まさにそれに通じるものがありますね。治療行為そのものよりも、それについての説明に患者が物足りなさ、不信感を抱き、不満につながっている、と。

久坂部氏は末尾で、現状の医師の忙しさからいって、一人一人の患者に丁寧に向き合うのは現実的に困難と強く示唆しています。確かにそういう面もあるでしょう。どんどん悪化している医師(とりわけ勤務医)の就労環境を改善しないと、どんなキレイごとも画に描いた餅、です。

それに加え、医師・患者双方の「心掛け」もやはり必要です。

医師の側は、いくら完璧な医療行為をしていても、患者の納得が得られないために満足してもらえない、ひいてはその後の治療に支障を来す場合もある、ということを認識していただきたい。忙しいからといって必要な説明を省いたのでは、結局その後のクレームや余計な患者対応を招き、忙しさに拍車を掛けることになる。忙しい中では無理かもしれませんが、他のサービス業やカウンセラーから、顧客応対のスキルを学ぶ、ということもあっていいんじゃないでしょうか。

患者の側も、医師とまともに対話できる「賢い患者」にならなくては。分からないことや納得できないことは、医師にとことん問いただすなり、自分で調べるなりする。その上で、医療の資源が限られていることを銘記し、医師や医療に多くを求めすぎず、どこかで割り切るということがなければいけません。医師も病院も、あなただけのものではないのですから。

医師と患者が相互に不信感を高めつつあるかに見える我が国の医療は、「危険水域」に入りつつあります。まずは、そうした問題意識をみんなで共有することから始めませんか。これからも安心して医者にかかれる世の中であり続けるために。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください