累進課税(の強化)は正当化できるか?

投稿者: | 2010-08-28

所得税・相続税・法人税に関して、課税の累進率をもっと高めるべき、と考える人は少なくないようです。

我が国に関しては、これまで累進税率の緩和が進められてきたところですので、「元に戻す」というのが正確なところですが。

私はもちろん、こうした意見には反対です。理由は、以下の通りです。

税収は、期待ほど増えない
この次に挙げる理由によって、増税した分がまるまる税収増につながることはありえません。絶対に、と言っていいほどです。経済にマイナスになる分も考慮すると、愚策と言っていいんじゃないでしょうか。もっとも、累進課税強化を唱える人は必ずしも税収増を目論んでいるわけではないようなので、決定的な反対理由にならないかもしれませんが。

不毛な租税回避行動や、経済活動のゆがみを生む
脱税は論外としても、節税のためにかける時間やコストは不毛なものです。累進課税が強化されれば、ますますそうした租税回避行動に拍車を掛けることでしょう。とりわけ現在は各国が直接税のダンピング競争をしているようなところがあり、我が国があえてそれに逆行することは、富の流出につながるだけの気がします。

そもそも、税金は少ないほど正義
まぁ、これは信念の問題です。賛成しかねる人には、何と言おうがムダでしょうが。ともあれ、そうした考え方もある、ということは知っておいてほしいものです。逆に言えば、重税国家は悪政国家、ということ。

金儲けは「悪」?
累進課税強化を安易に唱える人は、本人が自覚しているといないとに関わらず、金儲けは悪いこと、あるいは、金を儲けているのは何かズルいことをしているからだ、と前提しているように見えます。だからこそ、あたかも罰金を徴収するかのように「金持ちからむしりとればいい」的な発想をすることの不健全さに気がつかない。そうした偏見の結果、ご自分が貧乏するのは勝手です。でもそれを政策論に持ち込まないでもらいたいものですね。

「格差」の問題には、もっと良い方法があるはず
つまりは、これが一番のポイントですね。累進課税強化を唱える人は、格差解消の手段として、それも最有力な手段としてこれをお考えのようです。他にもっとましな方法はないのか、あるいは、この方法には問題点やデメリットを上回る強力なメリットがあるのか、冷静に考えてから提案するべきではないでしょうか。そうした吟味なしでは「安易」のそしりをまぬかれませんよ。

格差への対応については、気が向けば別途書いてみます。ともあれ、上記のような理由で、所得税・相続税・法人税の累進税率をアップすることには反対です!むしろ、緩和しろよ、という立場。

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