遺伝子を解析したり操作する技術が発達することで、この数十年のうちに医療が劇的に進歩することが見込まれています。
これまでだったら不治の病だったものがどんどん克服されていくかもしれませんし、それに伴いヒトの寿命が大幅に延びるかもしれません。場合によっては200歳とかそれ以上に・・・。
進歩を止めろ!と言っても止まるものではありません。けれど私は、人類にとって必ずしも良いことずくめじゃないという気がしてなりません。
一つには、お金の問題。当初は高額な費用が掛かるためお金持ち、というか大金持ちしかそうしたテクノロジーの恩恵にあずかれず、命の格差みたいなのができてしまうかもしれません。ただこれについては、技術がこなれてくれば低コスト化がある程度は進むでしょうし、社会的な制度設計である程度克服可能かと思います。
もっと大きな問題は、ヒトを生きさせるテクノロジーが進歩することによって、ますます死が忌むべきものとなり、また人びとの迷いが深まるのではないか、ということです。あくまで予想にしか過ぎませんが、安らかに死ぬ人が今よりも減って、あがきながら、あるいはいろんなものを呪詛しながら死んでいく人が増えてしまうかもしれません。
だからこういうテクノロジーについて「入手可能なものには何でも飛びつく」というのではなく、ある程度の取捨選択が必要だと思うのですよ。けれどその時、何がものさし、判断基準になるでしょうか。
医療の進歩に人びとの意識が追いつかない、という状態にならないよう、今から考え始めておいた方がよろしいかと。進歩は、予想以上に速まるかもしれませんよ。ただ少なくとも私は、進歩を手放しで歓迎し、喜ぶという風にはなりそうにありません。