今週発売の週刊ポストが安楽死の特集をしています。
昨年来、有名な作家である橋田壽賀子氏、筒井康隆氏が安楽死願望を発表し、それなりの反響がありました。またかねてから月刊SAIOでは世界各国の安楽死事情をレポートした連載が続いています。
週刊ポストは「タブーに挑戦」と表紙にうたっていますが、メジャーな週刊誌がこうして大々的に特集を組んでも、特に「けしからん」「反社会的だ」といって批判が起きているわけではありません。既に安楽死を語ること、それどころか「将来は日本でも安楽死を制度すべきだ」と主張することもタブーではなくなっているのではないでしょうか。
尊厳死の法制化すらままならない今の日本において、すぐに安楽死が国会の場で議論されるようになるとは思いません。ですが、
- 仮に法制化するとしたらどんな条件を付けるか
- 制度化した場合の社会的メリット、デメリットは何か
- 安楽死を合法化した国々ではどんなことが起こっているのか
といったことを冷静に議論し始めておくことは重要です。決して「時期尚早」とは思いませんし、そう決めつけること自体、議論・言論の自由を封殺する卑怯な手口だと言わざるを得ません。制度化に向けてはいろんなハードルがあるでしょうが、安楽死という大きなテーマについて真剣に考え、議論すること自体、死生観を養う格好のトレーニングにもなるはずです。
橋田氏、筒井氏のように高齢の文化人や芸能人が「私もできれば安楽死したい!」と表明することは今後も相次ぎそうです。無名の個人であっても、SNSなどを通じてそういう希望を表明したり、あるいは家族に「できることなら、自分もそうして死にたい」と伝えておくことはできます。実現はしませんが。
ところで、ポストの記事では医療費の削減効果についても試算されていました。どれくらいの人が安楽死するかにもよりますが、死亡者の20人に1人が安楽死するようになったとして、年間500億円程度だそうです。何十兆にのぼる我が国の医療費から見ればはした金ですので、「医療費削減のために安楽死導入を」という話にはなりそうにありません。安楽死推進派の側こそ、こうした試算をもっと広めるべきではないでしょうか。