葬送の分野では、「自分らしさ」「その人らしさ」が流行り文句です。
でも残念ながら、今出てきているような「らしさ」はショボいものが多い。ちょうどお昼ご飯に何を食べるか、外へ何を着て出かけて行くか、といった選択の問題、つまりは好みのレベルにしか過ぎないものが多いからです。
「らしさ」を打ち出す資格があるのは、本来、その人ならではとでも言うべき人生の幹のようなものを持っている人だけではないでしょうか。そうでない人が薄っぺらな「らしさ」を誇示するのは、かえってその薄っぺらな人生を強調することになりかねません。
それくらいなら、「らしさ」の演出は抑え気味にしておいて、故人をよく知る人たちに「あんな人だったよね」と回顧してもらう方がましです。些細なエピソードとか何気ない癖とか、演出にはなじまない微妙な部分で、周囲の人は「らしさ」を感じ取っているはずですから。