財政赤字から目をそらす心理

投稿者: | 2012-07-08

我が国の財政状況が甚だしく厳しいものであることは、誰の目にも明らか。

私にはそう思えるのですが、中にはそう思わない人がいるようです。「財政破綻なんてあり得ない」「日銀が国債を引き受けるなり、紙幣を刷りまくるなりすれば良い」という信念を持っている人たちです。私に言わせれば「迷信」なんですが・・・。困ったことにそうした迷信を売り物にする論者が存在するため、彼らは自分の考えに合う論者にだけ耳を傾け、多数派の財政学者や経済学者の声に耳を傾けないのです。

私から見ると、こうした人たちは戦争に負けつつあるのに不利な状況を認めようとしなかった昔の日本人(の一部)と重なります。奇妙な迷信によって、逃れようのない現実から目をそらそうとしているとしか思えません。彼らが「自分は間違っていた」と気付くときは、いつ来ることでしょうか。いざ事態がどうしようもなくなったら、また日銀なり政治家なり学者に責任を押しつけて、自分たちの迷信を守ろうとする公算が大きいように見えますが。

たとえば産経新聞に連載されている伊藤元重・東大教授のコラム。彼らはこれを読むと、物凄い反発を覚えるでしょうね。それか、あまりに自分たちの認識と違うので、最後まで読み通せないか。

【日本の未来を考える】東京大・大学院教授、伊藤元重 国債利回り安定…でも安全? – MSN産経ニュース

景気が低迷したまま国債市場が安定しているのか。それとも景気回復の兆しが見えると同時に国債の利回りが上がっていくのか。どちらに転んでも、日本経済には大変な状況だ。欧州で起きている財政危機は、多くの日本人にとって対岸の火事のように思われているかもしれない。しかし、いったん国債の利回りが上がり始めると、財政運営は非常に厳しいことになる、という教訓は学ぶべきだろう。

人口の高齢化で社会保障を中心とした財政需要は膨らむのに、それを賄う税収は先細り。今はたまたま企業の貯蓄が銀行を通じて国債消化を可能にしているが、それがいつまでも続くのか。また続いたとして、それは我が国にとって経済的に好ましいことなのかどうか、というわけです。

別の日のコラムでは、市場から「危ない」とみなされたら手が付けられなくなるかもしれない、と警鐘を鳴らしています。

【日本の未来を考える】東京大・大学院教授、伊藤元重 日本は欧州と違うのか – MSN産経ニュース

さて、大いなる安定ではなく、不安定で不透明な時代の中で、日本の置かれた状況をどう考えたらよいだろう。膨れ上がるばかりの政府債務、垂れ流しの財政赤字、何も決められない今の政治システム。こうした事態を見て不安な気持ちにならないはずはない。グローバル市場の関心は目下のところ欧州に集中している。しかし、冷静になって日本の政治経済状況を見れば、欧州で起きたことと同じようなことが日本で起きないはずはない。日本は欧州とは違うのだと思い込み、政策的判断を先送りしてきたが、糊(のり)しろはそろそろなくなりつつある。

他に小峰隆夫・法政大教授も、日経ビジネスオンラインでわかりやすい論考を連載されています。彼らにこそ、読んでもらいたいんですが・・・。

小峰隆夫の日本経済に明日はあるのか:日経ビジネスオンライン

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