数日前、奨学金を返せない若者が増えている、というドキュメンタリーを観ました。
これ自体、いろんな分析が可能なのですが、やはり大きなネックは若者の就職難です。あるいは、就職しても非正規雇用だったりして、安定した収入が得られない。
ヨーロッパなどでは以前から言われていたことかと思いますが、改めて「働くつもりがあるのに職に就けない」あるいは「せっかく職に就けても、条件の悪い職に甘んじざるをえない」という状況は、そこから派生する多くの社会問題を生むのだな、と痛感させられます。
すぐに思いつくだけでも、
- 貧困・借金
- 引きこもり
- 結婚できない
- メンタルヘルス上の問題
- 自殺
- 犯罪
- 親に依存せざるをえない
などに直接つながります。上記を通じてさらに問題を生むものまで含めれば、「あらゆる社会問題の元凶」と言ってもあながち過言ではありますまい。そして何より、若者が将来に対して前向きな展望を持てない社会は、決して健全なものとは言えません。
菅首相もその辺の問題意識をお持ちのようで、さかんに「雇用」を強調されます。ただいかんせん、その処方箋は奇想天外で、とても持続的な雇用の拡大に結びつきそうにありません。奇策を試みるのは、経済学的にオーソドックスな手を尽くしてみて、それでもさしたる効果がなかったあとでいいのではないでしょうか。
ここで重要なのは、求められるのは雇用の維持ではなく、雇用の拡大だということです。一定程度雇用という「イス」から引きずり下ろされる人は出るかもしれないが、長い目で見ればイス自体が増えている。そんなのが理想のはずです。しかも、多様なイスが。
とりあえず、雇用の問題そっちのけで上記のようないわば派生問題に対症療法を施したとしても、実効性はたかがしれている、ということを確認しておきたいと思います。