死のブーム

投稿者: | 2009-02-26

今日のNHK「クローズアップ現代」は、「死と生を見つめる」というタイトルで、「おくりびと」と「悼む人」を取り上げていました。

ゲストの中沢新一が訥々と深いことを語る、非常に印象深い番組でした。

死と生を見つめる ~おくりびと 悼む人~

死者をひつぎに納める納棺師が死と向き合う様子を描き、日本映画史上初めて「アカデミー賞 外国語映画賞」に輝いた「おくりびと」。そして、死者を悼む旅を続ける青年を描き、25万部を超えるベストセラーを続けている小説「悼む人」。いま、「死」がモチーフの2つの作品への共感が、多くの人に広がっている。

一方で、凶悪な殺人事件が相次ぎ、命の大切さが軽んじられているとさえ思える現代。番組では映画の主演・本木雅弘さんと小説家・天童荒太さんに、それぞれの作品に込めた思いを聞くとともに、観客、読者の反応を通して、日本人の死生観がどう変わりつつあるのかを考える。

少し前の「千の風になって」などもそうですが、確かにここへ来て、死を真正面からとらえた作品が、特に中高年を中心に幅広い支持を得ている、というのは確かです。中沢新一は番組中で、「おくりびと」は日本人が古き良き「死(あるいは死者)が身近な文化」を甦らせる突破口になるんじゃないか、とまで言っていました。

葬送をめぐる様々な事象をウォッチしていると、ここ20年ほどで、少なくとも一部の日本人が死に対して持っている観念は大きく様変わりしたと感じます。それは新たなものであると同時に、明治より前、場合によっては鎌倉・平安・縄文というようなとても古い日本人への回帰という側面もあるように見えます。

私自身は、日本人が死生観に飢えているという感覚を持っています。本来仏教が元気であれば、その欲求にかなり応えられるんでしょうが、今の葬式仏教にそんなことは期待すべくもありません。勢い、各人が「物語」を求める、ということになってしまっているんだと思います。

でもこれについては、あと30年、50年もすれば死をめぐる新たな文化が確立されるような期待感を持っています。今は「自己決定」が強調されますが、日本人の価値観は自然とある範囲の中に収斂していくんじゃないでしょうか。家族のような小さな単位であればなおさら。

「おくりびと」が転換点ということになるかどうかはわかりませんが、まだまだ続くであろう「おくりびと」ブームは、そうした大きな流れにおいて一つのエポックとなるであろうことは間違いありません。

さて、下世話ながら、「次」は何が来るでしょうね。私の予想では、終末期医療の現場や、遺品整理の現場を描いたものはヒットしそうな気がします。

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