遺体を冷凍保存

投稿者: | 2006-01-21

両親の遺体を冷凍保存しているフランス人の男性に対し、同地の最終審において土葬か火葬に付すよう求める判決が言い渡されました。


両親を冷凍保存、是非めぐり仏で論議(YOMIURI ONLINE)
いつかは蘇生と両親冷凍保存…やめて埋葬せよと判決(ZAKZAK)

もともと父親が1984年に亡くなった母親を冷凍保存、2002年に父親が亡くなってからは、その遺志を継ぐ形で彼が両親を冷凍保存しているそうです。父親は生前、生体組織の冷凍保存を研究していた人だということです。

彼は葬儀・埋葬の自由を定めた1887年の法律を楯に行政の求めに抵抗、裁判になりました。判決は「公共秩序や衛生が脅かされる恐れがある場合」には埋葬の自由は制限されるとしました。

無制限に埋葬の自由が認められるべきでないのはもちろんですが、今回が「公共秩序や衛生が脅かされる恐れがある場合」に当たるのかどうか。確かに冷凍保存された遺体が科学の進歩によって将来甦るようになったら、混乱は生じるでしょう。けれどもその可能性があるというくらいでは、自由を制限する根拠としては弱いように思います。遺体の蘇生を禁止すれば済むことではないでしょうか。

とりわけ、この冷凍保存は伊達や酔狂ではなく、被告の父親にとって人生を掛けた選択であり、息子はその遺志を忠実に守っているのです。最大限尊重してしかるべきではないでしょうか。他国のこととはいえ、行政や司法の硬直した姿勢は残念ではあります。

こう言うと冷凍保存そのものに私が賛成しているように聞こえますが、個人的には興味がありません。死者を甦らせてどうするというのでしょうか。もちろん、科学の進歩によってただ死んだ人が生き返るだけではない形の「甦り」が可能になるかもしれません。遺伝子や脳内のメモリーのようなものについて。ただそれも、その時代に生きている人にとって益するところは少ないように思います。

埋葬の自由はできるだけ尊重したいものの、自身はこうした形での自由の行使には関心がない。つまり私の立場はそういうことです。

翻ってわが日本では、こうしたことは起こりえるでしょうか。埋葬等を業=ビジネスとして行う場合には「墓地、埋葬等に関する法律」の定めるところに従うことになっていますので、都道府県知事の指導が入ることは間違いないでしょう。一方今回のように肉親の遺体を保存していた場合には、死体損壊・遺棄罪のからみで警察マターということになります。よほど騒ぎにならない限り、警察は動かないだろうと推察します。

追記:上の記事を書いた後、父親が妻の遺体を有料で公開していたことを知りました。これはちょっと「やりすぎ」と感じますね、さすがに。

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