一澤帆布の「お家騒動」(2)

投稿者: | 2005-12-25

一澤帆布の遺産相続をめぐるゴタゴタ。この問題のもう一つの論点は、会社の経営権と遺言の関係です。


□コトは、跡継ぎ問題
つまり、経営権を経営者の思うがままに左右していいのか、ということ。今年は「会社は誰のものか」をめぐる議論が盛んでした。それは上場企業に敵対的買収者が現れたケースに触発されてのものだったわけですが、今回のケースは非上場企業にありがちなケースです。つまり、事業承継をめぐって、父親と子供の間、さらに兄弟間で意識の食い違いがあり、それが遺言により露呈してしまったということです。

先代会長の意図は知る由もありませんが、長男の息子を将来の跡継ぎとして指定しているところを見ると、長子相続を重視しているようです。ただ残念ながら、そのことが息子であり会社を一緒に支えてきた三男に伝わっていなかったようです。さらには従業員にも。

自らの会社とはいえ、従業員を70人も雇用しており、こうして全国的な話題になるほどのブランドを有しているわけですから、一澤帆布工業は決して一澤家の私物ではありません。ならば、跡継ぎ問題についてもう少し周到な配慮・備えが必要だったでしょう。その意味で、この問題の一番の元凶は、故信夫氏にあると言わざるをえません。

□事態の収拾策は
ことここに至っては、感情的なもつれもあり、なかなか収拾策を見出すのは難しいかもしれません。傍観者として無責任なことを言わせてもらえば、長男・四男は三男と同等の資産を譲り受けることとするが会社には口出ししない。長男の息子を後継とすることについては、本人にその意思があれば将来の社長含みで会社の経営層に加えるが、その任に堪えられないと分かれば潔く別の者に道を譲らせる、ということにしてはどうでしょうか。

今回のことで一澤帆布のイメージが低下したとしても、それは一時的でしょう。ただ、会社の組織がガタガタになってそれが製品の質に悪影響を及ぼすようだと、品質で売っている企業としては致命的です。各当事者はそのことを肝に銘じて、早く事態を収めてほしいものです。

ところで最後に、同社には顧問弁護士がいたようですが、彼は今まで何をやっていたのでしょう。事業承継の問題は中小企業にとって非常に重要であり、その部分でのトラブルを回避するのもまさに顧問弁護士の仕事のはずですが。

□この件の「教訓」
跡継ぎ問題の処理を誤ると、築いてきたものが一気に崩れ去る。

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